あと五分遅かったら

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 大学の構内を歩きながら彼女と話した。 「昨日は社会学しちゃったよ」  彼女はそんな話をして笑った。 「どうしたの?」  彼はたずねた。 「秘密なの」  彼女は笑顔でそう話した。 「秘密じゃ、オレの秘密も教えない」  彼はふざけた。 「あ、ずるいな」  彼女はそんなことを話して怒った顔をした。そして彼の顔を見て笑った。 「でも、どうもありがとう」  彼は彼女に礼を言った。 「良いの、良いの、気にしないで」  彼女は彼の横を歩いた。  彼は彼女の顔を見てキスしたいと思った。何だろう。この気持ちは。でも出来なかった。  普通以下の大学生は、恋人に本当にキスを出来る訳はなかった。
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