あと五分遅かったら

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 彼は恋人と待ち合わせをしていた。  時計を見ると待ち合わせの時刻の一二時まであと五分だった。その時彼の持っていたスマートフォンが音を出し始めた。  通話だった。画面を見て見ると彼の母からだった。通話を始めると 「お父さんが倒れたの」スマートフォンの音声で母親がそう言った。  何かの間違いだろと、彼は彼自身に言い聞かせていたが、病院に行かなければならなくなった。  恋人との待ち合わせ時刻はあと五分を切った。  彼は恋人にスマートフォンで連絡した。今日のデートは中止にすると恋人に伝えた。  病院に着くと、救命救急センターのベッドの上で彼の父は寝ていた。 「あと五分遅かったら危なかったです」  と医師は話した。心停止したらしかった。  その時、彼の父の心臓をマッサージしたり応急手当てをしてくれた女の人がいたらしかった。  その若い女の人は救急車が来ると姿を消したそうだった。誰だか知らないけど親切な人だなと彼は思った。  意識が戻った父は「お前の恋人に助けられたんだよ」と話した。 「本当に?」彼は驚いた。彼はスマートフォンで恋人と話した時に「少し遅れそうだよ」と彼女が話したのを思い出した。珍しいことだと思っていた。    そういうことだったのか。彼はやっと事情が分かった。彼女は父を助けてくれたのだ。
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