あと五分遅かったら

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 彼女にとって、彼の存在はあまり重要ではないらしかった。  彼女には友達は少なくなくいた。  彼にとっては本命の女だった。彼女のことを思っていたら結婚したくなってきた。  そのことを携帯電話機のメールで送ったら「結婚は出来んせんわよ」と返事されてしまった。  やはり無理があるらしかった。でも彼の父の命の恩人だし、好きなので付き合うことにした。  彼女には、遊び相手の一人でしかないということを知りながら、付き合ってしまった。  大学構内を歩く時には一緒にいてくれた。それだけで十分だと彼は彼女に対して考えていた。  それでいてさえない女を演じているようなところがあった。 「何もないところで転んだ」  と彼女は話した。 「コートをクリーニングに出したらとたんに寒くなった」  とも彼女は話した。面白いと彼は思った。
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