9人が本棚に入れています
本棚に追加
「あと5分、こうしていられるね」
私と彼の帰宅するバスは時間差で到着する。
彼の乗るバスは17分で、私の乗るバスは22分だ。
その間、いつも手を繋いだまま、おしゃべりをして待っていた。
決まって、バスが訪れる5分前になると時間を告げるのは、彼の細かい性格のせいかもしれない。
彼のバスを待つ5分と、彼がいなくなってから待つ5分の感覚は違う。
彼のバスを待つ5分は、まだ訪れてほしくない、ずっとこうしていたいという甘さに溢れている。
彼がいなくなってから待つ5分は、手に残るぬくもりを愛おしく感じながら、自分の中にあるふんわりした感覚を噛みしめて、また明日、ここで会えることを嬉しく思うんだ。
最初のコメントを投稿しよう!