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唖然とする初夏に、お好み焼き屋の主人が言った。
「まあそんな訳で、この子達もやっと地面に足つけて生活できるようになった。だから謝りにくる事を許可したんだ」
「そうだったんですか……でも、もういいんですよ」
初夏が微笑むと、当の女の子達が声を荒げた。
「よくないです! 初夏さん、アタシ達を殴ってください!」
「はあっ!?」
その提案に初夏よりも、陸と将馬の方が目をむいた。
「そちらのお二人にも言いたい事は山ほどあるでしょうし、何よりあんな酷い事しちゃって、アタシ達の気が済みません! どうかお願いします」
ガバッと頭を下げる二人に、陸と将馬が複雑に顔をしかめる。
その展開をニヤニヤと楽しそうに見守るのは、いわずと知れた大和。そしてお好み焼き屋の主人。
やはり長年の友人、類は友を呼ぶ。
「参ったな……僕達の事はもういいよ。ちゃんと謝りにきてくれたんだし」
「だよな。そんな事言われてもかえって初夏が困るだけ……」
すると陸と将馬の間から、ついと初夏が進み出て女の子達の正面に立った。
「え……、まさか初夏!」
パン! パーン!
次の瞬間、初夏の平手が彼女達の頬で景気よく炸裂する。
「う、うい……ういうい!」
「初ちゃん……!」
唖然として声がうわずる陸と将馬を振り返って、初夏はニッコリと笑った。
「このほうが、これからは仲良くできるかなと思って」
ワッと店内で歓声が上がる。
「最高っす! 初夏さん、やっぱり最高っすーー!」
「あははは! 陸くんや将馬くんより、初夏ちゃんの方が肝が据わってるな。あっははは!」
陸と将馬は苦笑いをして、今はもう笑いあっている初夏と女の子達の所へ足を運んだ。
「陸くん、今度彼女達が働いてる支店の方にもお好み焼き食べに行こうよ」
「はいはい……わかりましたよ、お姫様」
「おい……、手のあとついてるぞ、大丈夫か」
将馬が痛々しげに眉をひそめると、女の子の一人が頬を赤らめた。
「大丈夫です……将馬くんってやっぱり優しい。あの、彼女とかいるんですかぁ?」
「は?」
「あ、思い出した。そういえば君、あの時も将馬が好みだって言ってたよね。あれマジ?」
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