[プロローグ]はじまりの空

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[プロローグ]はじまりの空

 ──たのむ……あいつを守ってやってくれ    お前もあいつを見てたはずだ  だから俺の心をお前に遺す  あいつは海だ  気紛れで激しくて、深く優しい……  はは…… そういえば俺よりもお前のほうがずっとあいつに近いんだったな  お前も海の傍でなきゃ生きられない……  焦点の合わない目で僕の手を握り締めたまま、(かける)兄さんは逝った。  僕にあの人を守れと言い遺して。  愛した人を置いていくのはどんな気持ちだろう。  愛した人に置いていかれるのはどんな気持ちだろう。  その想いは計り知れないけれど、それでも兄さんはこんな僕にあの人を託してくれた。    僕にできるかな、兄さんの代わりが。  守れるのかな、きれいなあの人を。  今の僕じゃ無理かもしれない。だから早く大人になりたい。  そうすればきっと出来るようになる。  だって兄さんは言った。  空よりも、陸の方がずっと海に近いって──。
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