第二話 窮鼠猫を噛む

15/17
前へ
/63ページ
次へ
 あられもない声が漏れるのが恥ずかしくて肩にしがみついて夢中でキスする。ぴったり胸を合わせて舌を絡ませているとどこもかしこも繋がった気になって幸福感が増すけど、肝心の気持ちが繋がっていないことは頭の隅ではよーくわかってる。だから私は恥ずかしさを捨てて腰をくねらす。 「奥、もっと……」  くっとお尻を持ちあげられると夜気が動いて涼しく感じた。肌が汗ばんで息があがっていた。も、イキそう。 「十和子さん、先に」 「やだ」 「わたしも、もう」 「じゃあ、一緒ね」  私は膝を立てて浮かせた腰を回す。膝立ちになった慎也さんはステキに顔を歪めて私をますます昂らせる。でも最後は譲らなきゃ。奥にいっぱい貰うために。  お互いの呼吸はわかっているから、私が大人しくなると慎也さんは自分のペースで動き始めた。私ももう何をされても感じちゃう状態なのに、ピストンしながらクリを弄られて悶えちゃう。  え、なにこれ、仕返し? びっくりするくらい大きな喘ぎが口から飛び出て私は恥ずかしくて両手の甲で顔を覆う。なんだかんだ捨てられないのが恥じらいだよなあ、なんて頭の隅でまた考える。  もう軽く何回もイッてて足ががくがくする。大きいのがもうキそう。 「あ……」  ヤバい、頭ふわふわする。からだが浮かび上がる感覚。 「あ、ん、んん……ッ」  一瞬後には、沈み込む感覚と同時に体中がびくびくと震えた。きゅーっとお腹の奥が閉まってそれまでより慎也さんを強く感じる。一緒に、熱いものがお腹の中に広がる。ああ。今日もたくさん貰えた。  達成感に脱力して息を整えながら私たちは繋がったまま前戯のようなキスをまた繰り返した。  たくさん愛してもらってお肌はつやつや、腕の噛み傷もほとんど直ったし、大きめのばんそうこうを貼るだけですんだのであんずには「ちょっと転んじゃった」とごまかせた。  ストーカーは捕まえてうんと懲らしめてやったから大丈夫、つきまとわれることはもうないから。なんの保証もないことを力強く言い切ったところ、あんずは納得したにせよそうでないにせよ、笑顔を見せて頷いた。 「トワさんがそう言うなら安心です」  もーやだ、このコ。素直で可愛すぎる。 「これから解剖?」 「はい。今日でやっと一区切りです」  あんずが胸元で握っている手は、小さく震えていた。 「いいものあげる」  そんなあんずに、私はピンク色の小さな巾着型のお守りを渡した。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加