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「それで、仲直り?」
「っぽいですよね。でも」
これで納めていいものかどうなのか、なるみの中で葛藤があるらしかった。
「今回はこれですんでも、こういうことってまたあるんじゃないかって」
だよね。私だってそう思うぞ。
「でも。ああいうことを言う人だって見抜けなかったのはわたしなんだよなって……」
「ストップ」
なるみのくちびるの端が引きつるのを見て、私は手と声をあげていた。
「それダメ。相手の人間性の問題を自分の責任みたいに思っちゃうの、よくないよ。夫婦だろうが別々の人間なんだから」
なるみは目が覚めたみたいなきょとんとした顔で私を見て、あの、といきなり言った。
「トワさん、今からうちに来てくれませんか?」
滝沢夫婦の愛の住処は、山を下って上って、直線距離にしたらけっこうすぐの場所だった。
道順を聞きながら外に出ると雨があがっていて、ちょうどよかったと原付で向かった。初めて行く通りだったけれど、神明社の方へ繋がるっぽい抜け道があったから帰りはそっちに行ってみようと思った。
近年人気が高まっているという高台の新興分譲地。新築工事中の一戸建が並ぶ界隈からはずれた場所にメゾネットタイプの賃貸マンションが二棟並んでいて、駐車場になるみのラパンが停まっていた。
駐輪スペースに原付を置いて、部屋番号を確認しながらインターホンを押して待っていると、ぱたぱたと軽い足音の後、玄関ドアが開いてなるみが顔を出した。
「早かったかな?」
「イエ、ダイジョウブです」
おそるおそるといったふうになるみは部屋の中に私を入れてくれた。まず目に入った玄関は何足も靴が出しっぱなしということもなく、靴箱の上も片づいていて、百均で見たことのあるようなないようなインテリア小物が控えめに佇んでいた。
玄関の目の前がリビングらしく、雨あがりの煙るような光がレースのカーテン越しに室内に差し込んでいた。広さは八帖くらい、テレビとソファとローテーブル以外は横長に置かれたカラーボックスがあるだけ。さっぱりと物が少なく、そしてすっきりと片づいた印象だ。来客に慌てて掃除したなんて雰囲気はいっさいなく、普段からきれいにしてるのだろうなっていうのを感じる。
「すごい」
私は思わず口にする。
「きれいにしてるんだね」
そうとしか言いようがない。ソファのカバーには皺も寄ってないしましてや汚れやシミなんかもない。ドラマの中でお姑さんがやるみたいに人差し指でテーブルの上を拭ってもホコリなんか付かないだろう。
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