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「ふうん」
重たい体を起こして私も縁側にあぐらで座った。ああ、だるい。くるもんもこないのに月の周期で体調が悪くなる。めんどくさいからだだ。
開いた窓からけだるく吹き込んでくるぬるい風は、昼間雨が降ったせいで草木の匂いが濃い気がした。
「トワ、訊いてもいいか?」
「やだよ。メンドクサイ」
「そうか」
やけに素直に引っ込むシモンが気持ち悪くて私は立てた片膝に頬杖をつきながら唸った。
「バカ、気になるから早く言え」
首をねじるのもおっくうで庭先の小石の影を見やりながら言い放つ。
「おまえ、ほんとは何歳(いくつ)なんだ?」
間髪入れずに投げられた問いに私は固まった。なんだこいつ。藪から棒に。
ちらっと目をくれると、シモンはこっちへ向き直って微動だにせず私のことを見ていた。青白い光の中で端正な顔がなおさら彫像めいて見える。
「……なんで?」
「女ってのは定期的に血の匂いがするもんだけど、おまえにはそれがない。時間が止まってるのかと」
セクハラかよ、キモチワルイ。とっさに罵ってこの場をしのぐ考えも浮かんだけれど。瞬発力があまりに足りなくて。
いつもは薄茶色に見えるシモンの瞳は青白く尖っていた。刺すなよ、目で。私は嘆息して前髪をかきあげた。
月経血は卵を抱くことができなかった子宮が流す涙だってのたまった女医がいた。それを聞いたとき、なんだそれって思った。妊娠してない女は毎月毎月自分の子宮に泣いて責められてるわけか?
ただの霊力製造装置の私の子宮は涙を流すことなんてそもそもない。そんな私が怒っても仕方ないのに腹が立ったから不思議だ。気持ちは女なんだよな、やっぱり。
「あんたはどうなのさ、吸血鬼(ヴァンパイア)。いったい何年生きてるの?」
質問に質問で返すと、ものすごい顔で睨まれた。見動きしないまま斜めに針のような視線を受け止めていると、やがてシモンはぷいっと顔を背けた。
「忘れた」
「私もだよ」
お互いバケモノなんだよ。突っ込むなよ。
細く息をついて目を上げる。シモンも唇を引き結んで今度は頭上を睨みあげている。
虚空のあれこそが、いちばんの魔物だ。私たちバケモノは知っている。無慈悲な月の魔の威力を。
数日後、またなるみが訪ねてきてくれた。梅雨空の合間の午後の日差しの中、彼女は軽やかな足取りで石段を上ってきた。
茅(ち)の輪作りに必要な材料を調達しに氏子の農家さんのところに出かけている慎也さんの代わりに、私はぼーっと売り場の窓口に座っていた。お客さんなんかめったに来ないからずっとそこにいる必要はないのだけど、ハンドグリップをにぎにぎしながらぼーっと座ってた。そしたらなるみがやって来た。
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