おじいちゃんに100点を。

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だけど、何台も何台も車は僕の前を通り過ぎて行く。 見えないのかなぁ… 不安になって、ぶんぶんとプラカードを振ったり、グルグル回したり、思いっきりジャンプしたりしてみた。そのうち、体力を消耗したのか、お腹が鳴って、僕はお母さんのおにぎりを二つ、お菓子も全部ペロッと食べてしまった。 それからまた粘ってみたけれど、止まってくれる車は一台も無く、僕は急に眩暈を感じて道端に座り込んでしまった。エールを送ってくれていたミンミン蝉の声も聞こえなくなっていた。力が入らない手で水筒を出し、水を飲もうと顔を上げた時、一台の黒いジープが目の前で停まった。 僕は立ち上がって、プラカードを見せた。 運転席が開いて、顔を出したのはいかつい顔したおじさんで口元周りにもっさりとした黒いひげを生やし、少し長い黒髪を後ろで結んでいた。真っ黒に日焼けしているその人を見た時、僕は前に読んだ絵本に出て来た原人のネアンデルタール人、みたいな人だって思った。薄いピンクのタンクトップを着て、シルバーのアクセサリーを重たそうに幾重にも巻いて、片耳にごついピアスをしたお猿顔の人は一度見たら、忘れられない顔だなって思えた。
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