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6 京都で目的を果たした杏は、大学を目指して勉強に勤しむ
帰りの新幹線の中で、行きと同じようにこの2日間の事を考えていた。
好き合っている同士の別れは、確かに寂しく悲しいものだ。ましてや、
身体の関係ができたのだから余計にそうだ。しかし、私がそれ程寂しく感
じないのはなぜだろう。彼の事は好きだし恋をしているが、愛というもの
ではないと思う。彼と結ばれはしたが、愛という感情は湧いてこなかった。
昨夜の彼は私の上で一生懸命で、気の毒になるくらいに汗をかいていた。彼
にとっては、受験勉強よりも必死だっただろうが、私は冷めていて、早く終
わらないかなとその時思っていた。申し訳ない気持ちはあるが、正直な所、
彼に抱かれた嬉しさとか、処女を失った悲しさはなかった。それよりも、処
女を捨てるという目的を果たして、その達成感が得られた。一方で、その行
為の最中に、男に支配されているという嫌な気持ちはぬぐい切れなかった。
家に帰ると、早速彼からメールが届いた。楽しかった2日間の思いや愛し合った(と彼のメールにはあった)事の喜びが書かれていた。私もそれなりのメールを返していた。それからは毎日のようにそれは続いたが、一区切りが付いた事で、私は当初の予定通り受験勉強に本格的に勤しんだ。彼からのメールも、励ましの言葉が多くなり、やり取りが自然と減っていった。
新学期が始まり、いつもの4人に京都のお土産を渡し、彼との出来事を洗いざらい伝えた。皆は興味深く聞いて、特に花純は驚きを隠せなかったようだ。
「すごいね!私は無理だわ、男の子と一緒の布団に寝るなんて到底できない。」
それから皆は口をそろえて、「杏は変わったね」とか「可愛くなったよ」とか言っていたが、私は「大人の女になったね」と言ってほしかった。
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