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Vote5田中鈴菜
谷田は、二股でも良いから付き合おうと言ってる。
遼太は、私と結婚したいと思ってるみたいだ。
谷田が客間に引き上げたので、縁側で一人月を見上げる。
ここ最近の私の恋愛事情がつらつらと思い浮かぶ。
さっきの母の一言はトドメだった。
何でいつも母は、ターニングポイントで私の背中を押すのだろう。
「明日の夕方でしょ?飛行機の時間」
冷蔵庫からビール瓶を出しながら
「うん、何かおつまみ有る?」
郷土名物の乾物を渡された。
「街中に新しく出来たショッピングセンター、気になってたの。望と行くから、あなた達二人とは空港で待ち合わせね」
「はぁ?」
「鍵かけてて良いから、もう大体の人がお焼香に来たし…谷田さんと話す事有るんじゃない?」
「……」
そう言えば遼太と初めて身体を合わせる機会も、母が作った。
今また同じ様な状況を提供してくる。
何というか生々しい。
「…普通する?娘を男性と2人きりに」
「ぷっ!娘って貴女いくつ?あはは」
さも可笑しい事を私が言った風に、目尻に浮かぶ笑い涙を指ではらい
「帰ったら無いでしょ、そんな機会」
「…私、遼太と付き合っているんだよ」
「そうね、私も遼太先生好きよ。でも貴女は迷っているでしょ?
迷ってて試す機会が目前にあるなら、躊躇しないで活かさないと」
「お母さん…どんな恋愛してきたの」
「ふふっ内緒。でもお父さんが今でも一番」
ビールが手の中で生ぬるくなっていく。
実は数個避妊具を持ってきてた。
最初の頃、遼太と使った残りだ。
遼太が嘘を言ってないと分かると、使わなくなった。
予感がしたのか、谷田とそうなりたいという願望があったのか、どちらにしても浅ましい。
遼太とは未だ別れてないのに。
というか別れたくない。
結婚はしたくないが、付き合っていたい。
彼の住まいの緊急事態で同居したが、適度な距離感でいたい。
遼太が家を出てから暫くして、マンションのエントランスに無精髭を生やした彼が待っていた。
身だしなみに気を配ってる彼にしては珍しい。何か切迫した用事が有るのだろうと思い、
「10分したら、行くから」
?マークの望を先に行かせた。遼太の横を通る際ハイタッチをしてた。2人は未だ仲良しだ。
用件をなかなか言い出さないので
「どうしたの?それ」
と無精髭を指すと、顎を撫でながら
「…ああ、代休だったから、お泊まり保育の」
もう、そんな時期か。
「で、何?忘れ物?」
「あの男と付き合うのか?」
前のめりに尋ねてくる。
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