Vote4谷田圭吾

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地方空港に到着後、手配したレンタカーに乗り、まずは鈴菜の実家に行き望くんを預けた。 夕方近くになってしまったが、逆に仕事終わりで頃合いが良いと、向こうの社長自ら話を聞いてくれた。 「万事、分かった。遠いとこワザワザ有り難う。ところで今夜は、どうすんだい?」 気さくな社長に、鈴菜の郷里を伝えると 「あ~あの辺は、少し奥まっているかならな」 と合点がいった様だ。 鈴菜の祖母の葬儀は、簡単な家族葬だった。 高齢で長く介護状態だったので、久しぶりの家族の団欒に花が咲いた感じになった。 鈴菜の母に、初めて俺が挨拶した時 「あれまっ」 と少し驚いた顔をした。 「何か?」 「いや~声が亡くなった主人と似てる感じしてね」 鈴菜を見ると。素知らぬ顔をしてる。 俺も久しぶりに休みを取り、帰りの飛行機を合わせた。会社で噂になっても構わない覚悟は、もうしてある。 田中家の客間に泊めてもらい、日中知り合いがお線香をあげに来る間は、不謹慎だが一人レンタカーで旅行気分を味わった。 久しぶりに山間の美味しい空気を吸った。 俺の実家は海の近くなので、潮風がきつい。 たまに磯の香りが懐かしくなるが、最近帰省してない。 帰れば、結婚の話や見合い話で煩いからだ。 東京に帰る前の日、従兄弟達と遊び疲れた望くんは、早々と爆睡していた。ここにいた間、毎晩将棋の相手をしていた。 最近やり始め、夢中な様だが周りに指せる相手が少ないらしい。 縁側でボンヤリ月を見ていたら、鈴菜が 「有り難う、色々と」 ビールとツマミをお盆に持ってきた。 「こちらこそ、息抜きさせて貰って」 軽くグラスを合わせる。 何だか夫婦みたいだ。 居ずまいを正し、 「きっと帰ったら俺達の事、噂するヤツも出てくると思う」 「…」 「休みを合わせた事は謝らない。俺にも必要な時間だったし」 「…分かってる」 「アイツとは、どうなってるの?」 「…結婚したいって。だけど私はもう誰とも結婚は考えられない」 「付き合ってても?」 「うん」 「望くんに父親が必要でも?」 「…意地悪だね」 ビールを継ぎ足した。一口飲んで 「俺、彼氏に立候補するよ」 「…遼太と別れてないよ」 「分かってる…だから比べてみ。どっちが良い男か」 「!?…二股OKって事?」 滅多に見ない彼女の驚き顔 「そう、迷うの好きだろ?実は。 こっちも良いな。あーでも、こっちも捨てがたいってさ」  「……悩んで良いの?」 逡巡してる鈴菜。悪い(やつ)だ。 残りのビールを一気に飲み干し、鈴菜をヒタッと見据えた。 「彼氏がいる女に手を出すんだ、最初から長期戦、泥沼覚悟だよ」
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