Vote4谷田圭吾

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法務との次の仕事は、支社が交わした広報に関わる契約書の見直しだった。 勿論、支社が現地の取引先と契約書を結ぶ時、本社の法務で精査する。 しかし契約時から時が経ち、修正や破棄等、現在の状況に合わせた取引内容を契約書に落とし込む。 それを二人で又組む事になった。 支社の担当と現在の取引状況を一々電話で確認しながらやるので、骨が折れた。 状況を説明し、鈴菜の法務部で修正が入った契約書は、再度支社を通して取引先に渡る。 稀に契約書の修正に納得いかない取引先には、本社の担当として俺と鈴菜が説明に直接伺う。 それが数件あり、一つはかなり遠い所だった。日帰りでは無理なので、出張を考えていた矢先、 「その出張、望を連れて行っても良いかな」 と暗い表情で鈴菜が提案してきた。 「どうして?」 「祖母が亡くなったの。葬儀があるんだけど、この取引先の場所から車で30分位なんだ…うちの実家」 「ご愁傷様です…いつなの葬儀?」 「今週末」 俺は、しばらく考えて 「じゃあ、前倒ししよう。契約書は出来てるし、先方は来るのはいつでも良いって言ってるから。鈴菜、有給残ってる?」 「うん」 「じゃあ、葬儀の後にくっつけて、使いな。彼処まで行くんだから、少し実家で親子ゆっくり過ごしたら良いよ」 「…谷田、有難う」 「じゃ俺、現地レンタカー手配するわ」 空港で待ち合わせをし、田中家へ帰省3人旅になった。 「あの辺、泊まるとこないから」 という訳で鈴菜の実家に俺も泊まる事に。 気になっていたので 「…彼氏は知ってんの?俺と行く事」 「遼太は出たの。うちから」 鈴菜が湿っぽくなかったので、怪訝に思い 「別れたの?」 と聞いてみたが、答えは返ってこない。 鈴菜の息子、望くんは、俺を覚えていた様で 「花火大会の時、ママの会社で演し物した人でしょ?」 確かに去年の夏、恒例の社屋から花火を見る会で奇天烈な格好をして、社員の家族をもてなし、皆の笑いをとった。
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