Vote1佐藤梓

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メニューを見直すと、なかなか手に入らない地方の生酒が揃ってる。やはり此処のマスターは神だ。 酒を注文し、チェイサーも頼む。 「てっきりプロポーズして、断られたのかと思って付き合ったのに。美味しい酒が台無し!」 「…たまには良いじゃん。お前と飲む事なんか希なんだから」 「あ~いつも女の所だもんね!…でも珍しくヘタレじゃん?」 酒がきた。一口飲む、美味い! チェイサーは小泉にやる。 「簡単だと思ったんだよね」 カウンターに顎をつけ、チェイサーを見てる目が座ってる。 「バツイチ女性が?アンタ、ホント女ナメてるね」 「…なのにセックスにハマって。居心地良くて」 トロンとした顔で何かを思い出してる小泉は、凄絶な色気を振り撒いてる。 「あ~3次元の生バナシ聞きたくないっ~ 私は2、5次元で十分!」 帰ったら配信動画、満喫しよう。 小泉とは、保育の短大から一緒だ。 第一印象は柔和なイケメン。当時、婚約者がいるという話だった。 まるっきり品行方正という訳ではないが、何でもソツなくこなす嫌味な奴だ。 それが崩れたのは、卒業近く。 手当たり次第、女と寝てた。 彼の飲んでるカルーアミルクみたいに甘い言葉、甘いマスク。 でも飲み過ぎたら腰が立たなくなる。 いつの間にか切って捨てられる。 その時丁度私は、会社の立ち上げを考えてて、圧倒的な人手不足に悩んでた。 小泉はタイプじゃないが、小泉みたいな優男は、ママさんちにウケる。 打算的に考えて、駄目元で声をかけたらノってきた。 もとから子供の扱いは上手いし、保護者のあしらいも器用だ。 ただ如何せん女癖が悪すぎる。 そんな男の報われない恋バナは、マジ面白い。
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