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小泉は姿勢を正して、チェイサーの水をガブリと飲み
「佐藤、お前、広報の谷田って奴知ってる?以前、取材に来た」
少し真面目な顔して聞いてきた。
「うん、立ち上げ時とアンタが着任した時来た人だよね?」
「そう、どんな奴?」
いきなり何だ?
「いや~個人的な事は知らんよ。
あっ!でも」
最初の取材の最後に、
「良い記事書きますので、利用者増えると良いですね。お互い、頑張りましょう!」
と言ってウィンクされた時は、吃驚した。
「昭和の香りがする人だったな~」
と言うと、小泉は不服そうに
「んな事じゃなくて!女から見てどうだったって事!」
「え~普通の人だよ。ちょっとキャラ立ってるけど」
ガクッと項垂れ
「…サトーに聞いた俺が馬鹿だった」
チェイサーを何杯か飲んで、酔いを払ってる彼を横目に会計を頼むと
「どうすんの?帰んの?」
小泉は、背伸びしながら
「ネットカフェでも行こうかな…」
「お金ないの?無いなら、うちのセカンドハウス貸そうか?」
「ヤだよ、お泊まり保育だけで十分。それに遠いから通勤大変じゃん。金なら有るから大丈夫…ただフンギリがつかないだけ」
「ま、もう子供オトして外堀固めてるなら、本丸に攻め込むのは楽でしょ?頑張って!」
「相変わらず、人の恋愛に関心がないヤツだな~」
別れ際、淋しそうな表情が胸に響いたが、あんな男に乙女心を捧げたら、ロクな事にならないのは百も承知なので、無視して先に立ち去った。
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