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Vote2小泉遼太郎
スタスタ帰る佐藤は、つれない。
だけど自分の立ち位置を理解してる女は、楽だ。
それに比べ、鈴菜は何であんなに頑固なんだ。
サッサッと俺との結婚を前向きに考えれば良いのに。
確かに鈴菜さんに向かって、ハッキリ求婚はしてない。前の結婚で懲り懲りという話を散々聞かされて、面と向かってする勇気がなかった事もある。
だから望くんを通して、
「パパいたら良い?」だの
「このまま遼太先生居ても良い?」だの
アプローチをかけて、漸く3ヶ月前
「俺がママと結婚したら嬉しい?」
って聞けたのに。
それを夕飯の支度をしながら聞いた鈴菜さんは食後、望くんが先にお風呂に入ってる間、凄い剣幕で怒った。
「望を誘導しないで!期待を持たせないで!…私達もいつまで続くか分からないんだし」
俺もカチンときた。
「先を考えてないのは鈴菜さんの方でしょ?俺は考えてるよ」
望くんの呼ぶ声がしたので、俺は風呂場に向かった。
そして今朝、望くんが登校した後の出勤前に
「遼太、家探さないの?」
「えっ!?どういう事、出てけって事?」
「付き合うにしても、ズルズルな感じがして嫌なの」
そんなやりとりがあった。
多分それは、あの女のせい。
1ヶ月位前、鈴菜さんが久しぶりの飲み会、同期会に参加した日の週末の午後、鈴菜さんちに一人の女性が遊びに来た。
容姿端麗な女性は、会社の同期で中島沙耶と名乗った。化粧も洋服も女らしさを強調してるのに、爪だけが短い。
「望くん超久しぶり~大きくなったね~私の事覚えてないよね?忙しくてご無沙汰だもん。はいコレ、ケーキ」
早口で喋り立てたと思ったら、ゆっくり俺の方に顔を向け
「初めまして!貴方が遼太先生?」
俺が同居している経緯を、知ってる様だ。
「彼氏がいるって、鈴菜教えてくれないんだもの~見に来ちゃった」
そういうアンタは誰から聞いた、と思ったが推測するのは簡単だ。
「もしかして谷田さんから聞きました?」
「ええ~凄い!何で分かった~」
軽そうな口調だが、目が笑ってない。
俺を品定めしているのが分かる。
「営業部のママさん達も、保育所にアイドルが居るって騒いでたけど、納得!」
会社で周知してないのに俺が彼氏だと、あの男、谷田圭吾が知っている。
それは鈴菜さんが言った、言わざるえない状況が二人の間にあったという事だ。
やはりあの日か。
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