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そのうち着ていた着流しの肩がはだけ、ほとんど諸肌脱ぎの状態になりながら、おれは目の前に道の続く限り、ひたすら駆け続けた。
あの女が、今どこにいるのかはわからない。しかし、この中身を見てしまった以上は、おれはこれを必ず届けてやらねばならない。
全力で駐在の追手から逃げていると、大川のあたりまで来た。そこで一人の女とすれ違った。
すぐに振り返った。その後ろ姿はーー確かに文に間違いがなかった。
しかし、例の屈強そうな駐在をまいてやるためには、そこで立ち止まることはできなかったのだ。
ここに書き連ねたことは、すべて事実だ。創作の意図は、いささかも入ってはいない。
この小説を、菊池寛大兄に捧ぐ
芥川龍之介しるす
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