役に立たない超能力

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 言い捨てて、ひげの男はきびすを返そうとしたが、 「ま……待て」  ギルフィーの呼びかけに、足を止め、ふり返った。ニヤリと残忍な笑みを浮かべる。 「やっとしゃべる気になったか」 「いや……おれの、超能力のことなら、しゃべろう」 「なに?」  ひげの男は一瞬ぽかんとした。そういえば、ギルフィーという姫付きの護衛兵には、不思議な能力があると聞いたのを思い出した。キエナ姫の行方を知りたいのはもちろんだが、その超能力とやらにも興味があった。 「なんだ、どんな力だ?」 「半径二十メートル以内にいる人間の記憶を消去できる。数分程度の記憶だが」 「はあ?」  ひげの男は間の抜けた顔をした。  それから、まわりの兵士たちと顔を見合わせた。  兵士たちの間に笑いが広がった。あざけりの笑いだった。 「聞いたか、みんな、記憶を消すんだとよ。それも、たったの数分。こいつは面白いぜ。傑作のジョークだ。そんなチョーノーリョク、なんの役に立つんだ?」  兵士たちはさらに笑った。  笑いがおさまると、ひげの男は言った。 「ふんっ。で、言うことはそれだけか?」
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