役に立たない超能力

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 ギルフィーは答えず、ただ笑みを浮かべた。腫れあがった顔をゆがめた、壮絶な笑いだった。  ひげの男は、背筋が寒くなるような薄気味悪さを感じた。 「あっ、中尉、あれを」  兵士のひとりが、部屋の隅に置かれた爆薬を指した。  なにごとかと、ひげの男――中尉もそちらを見た。  爆薬の表示が、〈00:25〉となっていた。 「ばかな! ついいましがた、十五分以上あった……」  はっと気がついて、中尉はギルフィーのほうを向いた。  ギルフィーはまだ笑っていた。 「わかったか。お前らの記憶を、何分か消去した。覚えていないだろうが、お前、さっきと同じことを、くり返してしゃべっていたんだぞ」  ギルフィーが言い終わらないうちに、兵士たちは出口へ逃げ出した。  もう遅い。  我先に走る彼らの背後で、爆薬のパネルが〈00:00〉を表示した。                              〈了〉
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