役に立たない超能力

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「あと五分だけ待ってやろう」  軍服を着たひげの男は、そう言ってダミ声をはり上げた。  彼の目の前には、椅子に縛りつけられた青年がいた。上半身は裸にひんむかれ、その肌には鞭のあとが無数の傷となっていた。 「答えろ、ギルフィー、キエナ姫をどこへ逃がした?」  ギルフィーと呼ばれた青年は、内出血で赤黒く腫れあがった顔をかすかに持ち上げ、 「さあ……おれは、知らん……」  そう言って、切れた唇の端を少しゆがめた。  ギルフィーが答えるなり、ひげの男の持った鞭がしなった。  青年を取り囲む軍人は、ほかに八人いたが、鞭の痛みに悶えるギルフィーに機関銃の銃口を向けたまま、押し黙っている。  ここは、イメリア王国の、砂漠のオアシスの町にある館だ。  半年前、軍がクーデターを起こし、政権を握った。それ以来、王家の血筋の者を、つぎつぎと捕らえて処刑している。処刑された王には六人の子供がいたが、いまも残っているのは、キエナ姫ただひとり。
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