流星

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「オレ?オレなんてマジで何の力もない凡人だよ。まあ、とりあえずさ、座ろうぜ。オレ、飲み物買ってくるから待ってな」 これ以上抱き合っているのは、マズかった。冷静になろうと、オレは一旦ひとりになることを選んだ。 公園近くの自販機の前で、月子に見えないことを振り返って確認してから、オレは頭を抱えてしゃがみこむ。 マジかよー!何なんだよ今日の月子は! あんな目で見つめられたから、一瞬全部ぶっ飛びそうになった。 あれ絶対、抱きしめ返してキスでもするシチュエーションだろ。 小学生と高校生でさえなかったらだけど。 言ってることは子供っぽいのに、どうしてあんな表情が出来るんだよ。そのアンバランスさに、オレは翻弄されっぱなしだ。 「はあっ」 今日はオレも、お母さんの手術のことで頭がいっぱいだったけど、成功したと聞いて一気に気が緩んだみたいだ。 ダメだ、オレ。しっかりしろ! 目を覚ますために、いつもは飲まないブラックコーヒーのボタンを押す。月子には、今日はリンゴジュースでいいかな。 火照った頭を冷やそうと、缶コーヒーを額に当てる。そのまま見上げた夜空には星がたくさん見えた。 流星って名前で良かったな。 初めてそんな風に思う。 大きくてあったかくて消えない流れ星…か。 マンガみたいとか、芸能人みたいとか、からかわれることはあっても、そんな風に特別みたいに言われたのは初めてだ。 それを言ってくれたのが月子だということが、また嬉しかった。 「それだけで充分だろ」 自分に言い聞かせるように呟いてから、彼女の待つベンチにゆっくりと歩き出した。
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