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変化
本日は朝から快晴。
絶好の球技大会日和だ。
いつもならこの日を心待ちにするタイプのオレだが、今年はそれどころじゃなくて、正直忘れていたくらいだ。
月子のお母さん、無事に手術が成功してホントに良かったな。
昨晩の事を思い出して、またニヤけてしまう。
月子と過ごす夜の短い時間は本当にハラハラドキドキしっぱなしで、オレは何だか情けないと思う。なのに、そんなオレを月子はヒーローみたいだと言ってくれた。あんな可愛い表情で。
しかもよく考えたら昨日オレたち抱き合ったよな?正確に言うと抱きつかれただけだけど。あの時はそれどころじゃなかったけど…。
思い出して、またドキドキする。ゆうべから何回これを繰り返したことか。
とにかく!
今は頭を切り替えて、球技大会を頑張るぞ!
バレーボール、バスケ、サッカー、テニス、卓球、ソフトボール等、自分の選んだ競技に出るわけだが、オレは今年はバレーとサッカーに出ることにした。大体なんでも得意なんだが、今年はそんな気分だった。
朝からバレーで1ーBと3ーCと当たり、軽く2勝をもぎ取った。次の試合まで待ち時間があるので、売店に飲み物を買いに行こうと渡り廊下を歩いていると、グランドの隅っこで、うちのクラスの女子たちがソフトボールの練習をしているのが見える。
「あ!流星!男子バレーどうだった?」
一人がオレに気付き、駆け寄って声をかけてくる。
「もちろん勝ってるよ。2勝中。そっちは?」
「うちらこの後初試合なんだけど、経験者も全然いないし、打てる気も捕れる気もしないから、ギリギリまで練習してるとこ!」
確かに…。
練習してる様子をチラリと見る限り、ゴロは全てトンネルしてるし、見事なまでの空振り。なんだったらもうキャーキャー言って逃げてるヤツもいるし…ヤベーかもな。
「時間ねーから大したことは出来ねーと思うけど、ちょっと練習付き合おうか?」
「え?いいの?流星野球部だもんね!そうしてくれると助かる!」
「じゃ、外靴履いて来るから待ってろ」
見るに見かねたオレは、急いで外に走った。
「いいか。守備の時は、膝を曲げて、姿勢を低くすること。大事なのは、怖いかもしれないけどボールから目を離さないことだ。慌てずに、しっかりとボールを捕ってから投げる。やってみるぞ」
女子十数名を相手に、オレのにわかソフトボール教室が始まった。実際にやって見せてから、弱めのノックをしてやる。
「ボールを捕る時は、ちゃんと正面に回れよ!」
キャーキャー言いながら、なんとか捕れるヤツもいる。
「おー!いいカンジじゃん。もし捕れなくても慌てずに、まわりもフォローしてやるんだぞ」
多少マシになったところで、今度はバッティングだ。
「基本の構えはこう」
見本を見せてから、全員にマネさせてみるけれど、もちろん修正箇所は多数だ。オレは順番に、グリップを持つ手の位置とか、バットを寝かせすぎとか、アゴを引いてとか、脇を締めるとか、指導してまわった。
「基本のスイングはこんな感じだけど…」
とやって見せて、各々バットを振る女子たちの姿を見る。まあ…短時間で習得は難しいよな…と判断した。
「とにかく大振りせずに、バットにちょこんと当ててみるのもいいかもしれない。それで思いっきり一塁ベース目指して走れ!もしかしたら、運良くセーフになるかもな。相手チームの守備力によっては」
そうして順番にボールを投げてやり、バットに当てる練習をする。
「打つときもしっかりボールを見るんだぞ!」
何回かやってるうちに、うまく当てるヤツも出てきた。
「その調子、その調子。上手いじゃん!」
盛り上がって来た時、同じくバレーに出る祐介がオレを呼びに来た。
「おーい、流星!そろそろ体育館戻った方が良さそうだぞー」
「おー!今行く!」
ちょうど女子たちの方も、前の試合が終わって集合しないといけないようだった。
「流星くん、ありがとー!」
「おー。まあ、大したこと教えてやれなかったけど、ケガしないように頑張れよ!」
「はーい」
「がんばりまーす!」
「流星も頑張ってねー!」
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