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女子たちと別れて、急いで祐介と体育館に向かう。
「なかなか戻って来ないと思ったら、女子チームの監督になっててビックリしたわ」
祐介がなぜか嬉しそうに笑う。
「だってよー、あまりにも酷かったから、さすがに見てられなくてな」
「えー?お前ってそんな親切なヤツだったっけ?『面倒くせー』が口癖のお前が?」
何だよ、何が言いたいんだ。
「オレもたまには良いことすんだよ!」
「たまにはって、自分で言ってる」
ハハッと笑って、祐介がイオン飲料をオレに差し出す。
「飲み物買いに行ったくせに、それも忘れて女子たち見てやるなんて、お前はほーんとに良いヤツだね!」
言われて初めて気が付く。
「あ、マジだ。そういやスゲー喉渇いてる」
祐介に渡されたペットボトルを早速開けて水分を補給する。
「あー、うめー。お前こそ良いヤツだな、サンキュ!」
肩を組んで、祐介の頭をガシガシと撫でてやる。されるがままだった祐介が、ポツリと呟いた。
「流星、お前マジで変わったな」
「は?何がだよ」
今度は意味ありげに笑って、オレの背中をバシンと叩く。
「オレは断言する!もうすぐお前の時代が来る!」
「オレの時代?何のことだ?」
さっきから、祐介は言うだけ言って、オレの問いかけに答えない。急に組んだ肩からするりと脱け出し、少し先を走り出した。
「さっきの監督姿もしっかり写真に収めたし、いよいよオレの流星ホルダーが活躍するかもなぁ」
「は?また意味分からんこと言って。だから何なんだよ、流星ホルダーって!てか勝手に写真撮んな!」
やだねーと笑いながら、祐介は人が溢れる体育館に逃げ込んで行った。どうせすぐ同じチームで試合をするのに。これ以上オレが深く突っ込まないタイプだと知っての所業だろう。確信犯め。
結局祐介の言ってることはよく分からなかったが、何となく褒められているような雰囲気を感じた。
まあ、悪い気はしねーか。
さあ、次当たるのは、優秀候補とも言われる3ーAだ。
オレは肩を回して体育館に踏み込んでいった。
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