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祐介のセッターは上手かった。なにせ中学はバレー部でセッターをしていたらしい。高校でバレーを続けなかったのはもったいない気がするが、本人は今は写真部で満足しているようだ。
オレと祐介のコンビでほとんどの得点をとり、優勝候補の3ーAをもくだした。その後も順調に勝ち進んでバレーは優勝を勝ち取った。午後からのサッカーは準決勝までいったけれど、惜しくも敗退してしまった。
汗びっしょりになった頭を水道で思いっきり濡らすと、めちゃくちゃ気持ち良かった。教室に戻って男子たちが制服に着替え終わると、別の教室で着替えていた女子たちが一気になだれ込んでくる。
「流星聞いてー!うちら1勝出来たよー!」
ソフトに出た女子たちがオレのところに集まって来る。
「えー?マジで?勝ったの?」
あれで?という言葉をギリギリ飲み込む。
「言われた通りにやったら結構みんなバットに当たったよ!」
「相手チームのエラーとかもいっぱいあったけど、一生懸命走って点入れたんだよ!」
「私なんか相手が打った強い球捕ったんだよ!まあ、構えてたところにちょうど来たって感じだったけど」
オレを取り囲んで、女子たちが次々と喋る。
「2試合目はスゴイ速い球投げるピッチャーでボロ負けしちゃったけど、でも1勝も出来ないと思ってたから嬉しかったよねー!」
みんなやりきった顔で笑ってて、オレも指導者として嬉しくなる。
「お前らよく頑張ったじゃん。優秀な教え子で、オレも鼻が高いぞ」
褒めてやりたくなって、自然と女子たちの頭を次々にポンポンしてやる。
すると、一瞬その場の空気が変わった。
ん?何だ?
「うそー!流星が褒めてポンポンしてくれたー!めずらしー!」
「もっとしてー!」
おかわりを要求してくるヤツや、恥ずかしそうに赤くなってるヤツもいる。
あ、やべぇ!
つい、月子にするみたいにやってしまった!
「あー、わりぃ!最近年下の子に接することが多くて、つい…な。クセになってたみたいだ。変なことしてゴメン」
自分でやっといて、今更恥ずかしくなって赤くなる。
「えー!全然謝ることないよー。てかもっとしていいよ」
「年下の子にこんな優しくしてあげてるんだ?いいなーその子」
「流星くんて、意外とお兄ちゃん気質だったんだねぇ」
オレがうっかり喋ってしまったから、女子たちは更に盛り上がる。
オレは何だか恥ずかしくなって、居たたまれなくなる。やべぇ、なんかこういうの苦手だ。
「りゅうせいくーん。オレもお前のために打ちやすいトスたくさん上げたから、頭ポンポンして褒めてー」
急に目の前に、見慣れた祐介の顔が現れる。
「ちけーよ」
間近に迫ったその顔面を、ポンポンどころか強引に押し退ける。
「ちょっと祐介!邪魔しないでよぉ」
「ある意味祐介にポンポンする流星も見てみたいけどねー」
祐介も入りワイワイやっていると、担任が教室に入って来たので、そこで解散となった。
祐介、またふざけたフリして助けてくれたな。
隣の席をチラリと見ると、目が合って、ニカッと笑い返してくる。
イイやつだ。ホントに。
しかし…まいったな。
祐介の言ってた変わったって、こういうことか?
確かに、オレは今までこんなふうに女子に接したことはなかったように思う。
単純に、何かキャラじゃないっつーか、チャラついてる感じがして苦手だった。外見のせいで、何かと王子様キャラを期待されて、それに反発もしていたのかもしれない。
それがこんなにあっさりと、しかも、無意識にやってしまうなんて。これも月子の影響なのか?
月子が自分の中に占める割合がこんなにも大きくなっていることに、改めて気付かされる。そう気付いてまた嬉しくなったりもして。
ホント、抗えきれないくらい、オレの中は月子でいっぱいなんだな。
学校が終わる。
夜になればまた、彼女に会える。
オレの胸がまた、喜びでトクトクと騒ぎだした。
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