理想のタイプ

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理想のタイプ

「大下流星くん、お誕生日と血液型は?」 夜の公園。 月子は言ってた通りにノートとペンを持って来ていた。表紙にキラキラ光るたくさんの星が描いてあるノートと、金色の星のチャームが着いたペン。どうやら星グッズ集めにハマっているらしい。 お母さんの病院の帰りに、おばあちゃんに買ってもらったんだと、嬉しそうに話してくれた。お母さんの体調も良かったらしく、ご機嫌で安心した。 「4月15日生まれの牡羊座、B型です」 自己中心的と言われる牡羊座のB型。でも、最近のオレはそうでもなくなっているはずだ。月子のおかげで。 「身長、体重、靴のサイズは?」 「182センチ、66キロ。足のサイズは28センチ」 「スゴーイ!大きい!」 月子はあらためてオレのことをじっくり見た。なんか照れる。 「じゃあ好きな食べ物、嫌いな食べ物は何ですか?」 「好きなのは、肉全般。嫌いなのはニンジンとピーマンかな」 「えー、流星くん、子供みたいでカワイイ」 月子に笑われたけれど、なんかそれさえも嬉しく感じたりして。 「次に趣味、特技は?」 「趣味はゲーム。特技はスポーツ全般。ちなみに野球部です」 「あ!初めて会った時、バット持って来てたもんね」 月子が不審者かもしれない男の人に話しかけられているのを見て、オレはバットを持って駆けつけたんだよな。そんなに前のことじゃないのに、なんだか既に懐かしく思えてしまう。 「運動が得意なんだね。私はあんまり得意じゃないんだ。本を読んでる方が好きかな」 「マジかー。逆にオレは読書とか眠くなっちゃって無理かも。運動は好きだから、今日も学校で球技大会があってさ、メチャクチャ張り切ったよ。バレーは優勝したし、サッカーは準決勝まで残った」 「すごーい!私も応援したかったなぁ」 月子に言われて、ふと想像してみる。 今日の球技大会。時間が空いている生徒は、それぞれ自分のクラスの試合を応援していた。オレのクラスメイトたちだって、男子も女子もたくさん応援してくれた。そのギャラリーの中に、もし月子がいたなら。うちの学校の体操服を着て、 「流星くーん!頑張って!」なんて叫んでくれたら。オレは更に高く跳べたかもしれない。 あ、ヤバい。妄想でニヤける。 「じゃあ今度さ、町営球場で野球の練習試合があるから見に来るか?」 町営球場なら近いし、小学生でも自転車で十分来れる距離だ。 オレの提案に、月子は思わず立ち上がった。 「いいの?行きたい行きたい!」 「ああ。ハッキリとした日にちと時間が分かったらまた教えるな」 「わーい!楽しみ」 ホントに嬉しそうにしてくれるので、オレも嬉しくなる。こりゃあ活躍出来るように、練習もっと頑張らなきゃな。 「じゃあ、次の質問行くね。好きな色、よく聴く音楽は何ですか?」 「好きな色は赤、青、黄色とかのハッキリとした色かな。よく聴く音楽は、テレビとか動画で流れてて、イイと思ったら何でも聴くよ。特にどのアーティストが好きとかこだわりはないな」 うんうんと頷きながら、月子はオレの言うことを一生懸命書き留めている。街灯で薄暗いから、書きづらいだろうに。
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