1 今村家

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 真島は、今村家の臨時の主夫となってちょうど一週間後に、初めて入院中の多美を見舞った。妻が回復しつつあると、前夜に自身もようやく落ち着きを取り戻した竜次に報告を受けたこともあり、子どもたちが新年初めての習い事に行くに当たって四人で病室に寄ることにしたのだ。  今村家の三人の娘――小学五年生の彩香、同三年生で双子の泉美と春菜――が揃って週二日通うバレエ教室から、多美のいる病院まで車で片道十分かからない。母親が退院するまで娘たちはレッスンがある日に面会にも行き、真島も送迎の合間の今のように空いた時間に従妹の話し相手をすることになるのだろう。 「ごめんなさい、祐一郎君。こんなことになってしまって。竜次さんと子どもたちのお世話をしてもらって、本当に助かります」  一つ年下の多美は、仲の良い従兄に畏まって言った。 「いや、こっちも渡りに船だったよ。竜次から聞いてるだろうけど、専業主夫がキャリアウーマンの妻から家を追い出されることになって、途方に暮れてたところだったからさ。悪いけど、多美が良くなるまでは、和室で寝泊まりさせてもらうからな」
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