青のターミナル

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 空き教室の扉を開けると、制服に着替えた石川さんが最後に靴下をはこうとしているところだった。 「ごめん」  条件反射でものすごい音をたてて扉を閉めた。中からは大きな笑い声が聞こえてくる。  怒りと羞恥で震えながら待っていると、靴下を履き終えた石川さんが扉を開けた。 「別に、靴下くらい気にすることないよ」  笑いすぎたせいか、彼女の瞳の端に涙が浮かんでいた。 「おいでよ」と言われると中に入らざるを得ない。「西野さんたち、待ってるぞ」 「大丈夫だよ、少しくらい待ってくれる」 「やさしくするんじゃ、なかったっけ?」 「してるよー、やさしいどころじゃない、特別扱い」  窓辺の席に座り、頬杖をつく石川さん。俺はその近くにもたれるように立っていた。昼間よりも随分涼しくなった風が、教室に入り込んでくる。それでもどこか湿っぽさを感じるあたり、もう夏だなあと感じずにはいられない。 「宇佐見くん、聞いてよ」 「どうした?」 「わたしさっきね、今まで生きてきた中で一番勇気をだしたの。勇気を出して、うちが離婚してること言ったの。「お父さんは今日いないの?」って、みんなしつこいからさあ言わざるを得なかったんだよ。そしたらね、「大変なんだねえ」とか「うちもうちも」とか、みんなあっさりしてるの! どう思う?」
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