真の最終審査・判定

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横断歩道の向こう側で、リクルートスーツ姿の青年が立ち止まっていた。胸にタグを付けた最後のひとりだ。 青に変わると人混みに向かって歩いてきて、「すみません、すみません」と頭を下げながら慎重に社員達の間を通り抜けてゆく。遠慮深い態度に皆、自然と道を開けていた。 その青年のタグには「300番」と書かれている。 青年は人混みを通り過ぎたところで、倒れ込んだ老人の姿に気づく。立ち止まると一瞬、迷いの素振りを見せたが、何も言わずに転がるオレンジを一つずつ拾い上げる。そして老人の持つエコバッグにオレンジをしまい込み、そっと手を差し出した。 老人は感慨深い表情で、青年の手を強く握りしめる。 そして、ゆったりと立ち上がる。 「おじいさん、気をつけてくださいね」 「悪いねぇ、若いのに親切なお方」 「いえ、役に立てただけ良かったです」 そう言って青年は背を向け、早足で歩き出した。 老人は青年の背中を見送ってからおもむろに携帯電話を取り出す。老人はいつの間にか、凛とした、威厳のある風体に戻っていた。 そして、携帯電話の向こう側に審査の判定を告げた。 「もしもし、私だ。――300番を迎えるように」 その一言をきっかけに拍手が起きる。拍手は皆に伝播し、盛大な祝辞となって空に響き渡った。
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