第二次審査

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第二次審査

状況が理解できないでいる坂崎の目前に配られたのは、冊子と回答記入用のマークシートだった。冊子の表紙には、このように記載されていた。 『あなたは上司にこの問題を解くように頼まれました。五分間で可能な限り、この業務を進めてください』 そしてアナウンスが流れる。 「それでは開始してください」 すかさず冊子を開くと、そこには四則演算の計算式が羅列されていた。 「3+5×8-2」といった単純な問題で、小学生でも解けるものばかりだ。回答の候補が示されており、a~eの五つの中から正解を選ぶ形式である。 時間をかければ間違うことはないが、五分間という厳しい制限時間では半分も解くことができない。計算能力を推し量る試験なのだろう、桜井のほくそ笑む顔を想像した。 坂崎は一つ一つ答えを求め、マークシートに解答を記入していく。けれども、周りの人間の方が自分よりも早いペースで解いている気配があった。先に冊子をめくる音がして坂崎の焦りを募らせる。 気づくと残り時間は三十秒を切っていた。皆は計算しきれなかった問いの答えを埋めるべく、一気にマークをチェックし始めた。 すでに諦めの境地に達していた坂崎は、ペンを走らせようとして踏みとどまった。せめてどんな問題が出題されたのか、記憶にとどめておこうと、問題を読み直したのだ。 ――あれ? 坂崎はふと、問題の違和感に気づいた。 そこで残りのマークシートに記入するのをいっさいやめ、潔くペンを置いた。 「はい、終了です」
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