第一次審査・判定

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第一次審査・判定

一時間で三百人の履歴書とアピールポイントに目を通し合否を決定する。 三人の審査員の目の前を、書き込まれた書類が流れていく。 三人がそれぞれ「合」「否」の印鑑を持ち、私見でどちらかの印鑑を押してゆく。 審査員の一人が顔をしかめる。 「こういうのは本当に嫌ですね、自分のアピールポイントを書き連ねたいがために、履歴書の方が殴り書きですから」 もう一人の審査員も書類に目を通し同意する。 「確かに。虚栄心が強く、読み手の気持ちを考えていないのが丸見えですね。履歴書は一度提出しているからと、蔑ろにする姿勢はいただけませんね」 すると別の一人が、手に取った二枚の用紙を見て微笑を浮かべた。 「では、この方はどうでしょう。記載は丁寧ですし、たった一言――『みんなのために頑張りたいです』と。この愚直さが本心なら、私はこの人に会ってみたいと思いますね」 「そうですか、次で残れば分かりますね」
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