3人寄ればすっぽり

1/1
前へ
/1ページ
次へ
 あと5分。  今しがた、道行く知らないおじさんにその一言だけ耳打ちされたのだが、 一体全体何が”あと5分”なのか。  道端でゴミ箱にはまって抜け出せなくなっている女性に そのことについて尋ねると、こう答えた。 「”あと5分”が何のことかは分かりません。  そんなことより私を助けてください」 「助けよう、と言いたいところだが、チキンでも食べるかい?」 「いりません。私、鶏肉の方が好きなんです」 「はっはっは、鶏肉もチキンも同じものさ! 面白い小娘だ。  褒美にこのふやけた生春巻きを取らせよう。遠慮はいらん」 「フォーーー! インザパーリィナイト!!!」 彼女のつまらない一人芝居で4分半無駄にした。もう二度と聞くもんか。  残り30秒。これはあのおじさんに直接確認するしかない。 女性の隣で同じくゴミ箱にはまっていたので丁度良い。 真実を問いただすと、重い口を開き始めた。 「実はだな、あの5分という時間は......」 と、ここで5分経過。しまった。しかし、何が起こるというのか。 すると、突然、地中からゴミ箱がせり出てきて俺もすっぽり。 無言で微笑むおじさん。そのささやかな恐怖すらかき消す狂気の女性。 5分で怪しい友達が2人できました。 めでたしめでたし、と言い難いのはなぜだろう。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加