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あと5分。
今しがた、道行く知らないおじさんにその一言だけ耳打ちされたのだが、
一体全体何が”あと5分”なのか。
道端でゴミ箱にはまって抜け出せなくなっている女性に
そのことについて尋ねると、こう答えた。
「”あと5分”が何のことかは分かりません。
そんなことより私を助けてください」
「助けよう、と言いたいところだが、チキンでも食べるかい?」
「いりません。私、鶏肉の方が好きなんです」
「はっはっは、鶏肉もチキンも同じものさ! 面白い小娘だ。
褒美にこのふやけた生春巻きを取らせよう。遠慮はいらん」
「フォーーー! インザパーリィナイト!!!」
彼女のつまらない一人芝居で4分半無駄にした。もう二度と聞くもんか。
残り30秒。これはあのおじさんに直接確認するしかない。
女性の隣で同じくゴミ箱にはまっていたので丁度良い。
真実を問いただすと、重い口を開き始めた。
「実はだな、あの5分という時間は......」
と、ここで5分経過。しまった。しかし、何が起こるというのか。
すると、突然、地中からゴミ箱がせり出てきて俺もすっぽり。
無言で微笑むおじさん。そのささやかな恐怖すらかき消す狂気の女性。
5分で怪しい友達が2人できました。
めでたしめでたし、と言い難いのはなぜだろう。
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