溺れる嘘

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 ◆  周は気を失った塁の胎内からまた猛り始めた自身を抜き取った。ぽっかりと開いた後ろの口から、どろりと周の出した白濁が次から次へと流れ落ちる。その淫らな姿を視界に焼き付け、ぬめる猛りを擦って高めた熱を塁の柔い尻肉へと吐き出した。 「っはあ……はぁ……」  快楽の余韻に数秒間浸ったあと、周はすう、と冷えていく頭で親友に対してしでかした蛮行を思い返す。  ビールに睡眠薬を入れ、眠りについた塁を自分の部屋へ連れ込んだ。そして、予め用意していた媚薬を塁の腸内の粘膜に塗り込み、ローションを塁の腸内に流し込んだ。オメガだと思い込ませるには、それが直接的で一番だと思ったからだ。最後に、自分に対してオメガフェロモン薬を吹き掛けた。ラットになるには、どうしてもオメガのフェロモンが必要だった。  そうしてやっと手に入れた塁の体。まるで麻薬のような中毒性に、今にもまたその双房を割り開き、内部へ自分を収めたい欲求に駆られる。    ──覚悟していた。  嫌われても、縁を切られても、殺されてもいい。  一瞬でも、塁を、生まれたときから想い続けた人を手に入れることが出来るのならば。  後悔はないといえば嘘になる。だが、もう想い人を犯した事実は変えられない。 「……俺の、塁」  薄暗い中でもはっきりと分かる歯形に触れる。塁がオメガなら、自分のものになるのに。  塁は、アルファだ。どこをどう間違っても、その事実が変わることはない。  一生番うことのできない相手。でも、今だけは、それが嘘だらけの戯れだとしても、塁は自分の番だ。 「愛してる……」  (うなじ)に優しく唇を落として、周はふらりと立ち上がり、部屋を後にした。
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