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「ちょっと待ってよ! えーと、えーっと、えー……」
あぁ口がパサパサする。校内イングリッシュスピーチコンテストでもこんなに緊張しなかったのに、罪な男だコイツ。
「茉莉さーん、まだー?」
悠真はジーパンのポケットから取り出したスマートフォンの画面を見て、もう一度しまった。そして短い一言。
「あと5分」
「は?」
「あと5分で『好き』って言え。じゃないと俺は帰る」
ふざけんな人でなし!
「り! りふじん!」
「意味知ってる言葉を使え! こっちのセリフだ!」
あと5分?! あと5分でこの心臓のバクバクをおさめろっていうの? 横暴な! コイツ将来ブラック上司になるタイプだ! パワハラで訴えられてクビになるわ! アタシが支えてやらないと!
ムカついて睨んでいると、もう一度悠真がスマホを取り出し事務的に告げた。
「あと3分」
どうしよう、口が、口が、ついに閉じなくなって来ちゃった!
「……2分」
やばいやばいコイツまじで帰る言わなきゃ! と思うのに口が言うことを聞かない。
「1分切ったぞ……ったく」
ずっと腰に手を当てて突っ立ってた悠真が一歩踏み出したと思ったら、じりじりこちらににじり出て来る。
「あああ待ってこっち来ないで近い!」
無理無理無理照れる照れる照れる!
「お前本当は俺のことどう思ってんだよ」
歩み寄りながら言うなわかってるくせにメモに極めて読み易い楷書で書いてたでしょうが!
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