勇者だった俺

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このとても広い地球の上から、同時に五人の人間が消えたのはある冬の日のことだった。その日は二月十四日で、外は雪が降っていた。 この日、地球から消えた人間の一人である中学一年生の野村壮太は、担任の後藤たけし先生のHRが終わり、放課後を迎えるのを今か今かと待ちわびていた。 「よし、じゃあこれでHRを終わるが、…………。あんまり放課後に羽目を外しすぎるなよ。一応校則では食べ物の持ち込みはNGだぞ。まぁ、先生に用があるやつは後で体育教官室でな♪」 そう、今日は俺が待ちに待ったバレンタインデーだ。しかし、俺はチョコを何個もらえるかで誰かと競い合っているわけでもなく、たけし先生のようにもらえる可能性は低いのにチョコをもらいたいとは考えていなかった。 今日、俺は好きな子にチョコをあげて告白するつもりで来たのだ。 そいつとは幼稚園からの幼馴染で、『のむくん♪』と呼ばれる仲だった。 決して話を盛っているわけでもなく、そいつとは良い感じだったと思う。 だから、特別料理が得意というわけでもないのに、俺は頑張ってチョコクッキーを作り、ちゃんと割れないように持ってきた。 あと、もうその女の子には放課後誰もいない教室に一人で来るように呼んであるので、あとは告白するだけだ。 そう言ってウキウキ顔でクッキーを入れた袋を周りにばれぬよう手提げの中に忍ばせ、三階の空き教室に向かった。 そして、空き教室のドアを開けると、目の前に高そうな椅子に座った王様のコスプレをした人がいた。
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