勇者だった俺

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俺は迷わずドアを閉めた。そうだ、きっと俺は夢を見ているんだ。あまりにも告白するということに緊張してしまって幻覚を見たのだろう。 だが、何度ドアを開け閉めしたところで、その光景は変わらなかった。 俺が混乱気味に、ドアを何度も開け閉めしていると、不意に後ろから声をかけられた。 「呼びかけに応じていただき、ありがとうございます、勇者様。」 俺の後ろには、ファンタジーでよくある神官の服装をした人が顔を少し赤らめながら立っていた。 よく見ると、俺の握っているドアは扉とフレームの部分しかなかった。 「あのぅ、お召し物を身に着けていただけると助かるのですが…………。」 そう言われて俺は、初めてパンツ一丁でクッキーの入った袋を片手に存在していることを知った。 しかも、俺は今日、気合を入れて、家に何枚もある黒いやつではなく、レモン柄のパンツをはいてきていた。 俺、今日のためにどんだけ気合入れてきたと思ってるの?これ俺いつもはいてきてるわけじゃないんだからね。ただの気合い入れてるだけだから。………。 マジ泣きそう。
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