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電車の窓から
スズと何度も見た馬由が浜の海が見えてきた。
ここだけは時が止まっていたのかと錯覚する程
あの頃のままの海があった。
いや
時はちゃんと刻んでいる。
左手の指輪は
時の刻みと共に光沢を失くし
壊れて買い替えたスマホの画面は
あの日、白いひげをつけて笑ったスズじゃなく
部屋から見渡すブエノスアイレスの街並みになっていた。
だけど俺のこの手だけは
あの頃から止まったまま
今でも
スズを抱きしめたいと言う。
スズ
会いたい
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