第6話

2/4
前へ
/34ページ
次へ
 情けないことを言っていた彼女だが、そういえばこれも引っ掛かりました、と個人情報の扱いについて語り出した。 「入院患者さんの生活を勝手に暴くのは、あまりに現実の業務からかけ離れてます。誰にだって隠したいことはありますし、本人や家族が言ってくれないことは知らないままの方がいいこともあります。だから手芸教室に行って患者さんの情報を探るってのも良くないことで、ご近所の調剤薬局から患者の服用歴を聞き出すのは法に触れるレベルの話です」  その通りだ。入院患者とは無縁の存在であるドラッグストアの薬剤師、成田凌君に患者さんの氏名をバラしている時点で完全アウト。  調剤薬局の皆さんが、患者の服用歴や処方医院名を病院薬剤師にバラしちゃうのもあり得ないレベルの個人情報漏洩だ。患者本人の了承を得ていない以上、絶対にやっちゃいけないやつ。  確かに俺たち病院薬剤師は調剤薬局と患者情報の共有をすることはあるが、その際にはちゃんと患者の許可を得て、文章でその旨の確認を取ってからにしている。  薬剤師同士でつながって、勝手に個人情報をやり取りしているなんて世間の人たちに思われたら、どうしてくれるのか。  そういう意味で、今回の放送は残念だった。  今までだって、まぁちょっと大げさなところはあったけど、患者のために頑張ってる薬剤師っていうことでギリ許せてたところが、今回のはあり得ないことばっかりしていた。監修、ちゃんと入ってんのかな? 「まぁ、薬剤師が聞き取りをしたところで、素直に受診歴や服用歴を教えてくれない人はいますけどね。とくに年配のおっちゃんは」 「あのさとみちゃんも問い方がちょっと悪かったな。言いたくない患者さんって『飲んでいるお薬はありませんね?』って確認すると絶対『ハイ』って言うんだよ。あぁいう時は『飲んでいる薬がありますね?』って聞くべきだな。そうすると、あぁもうバレてるんだ、って諦めて『ハイそうです』って言ってくれるから」 「よーく考えたらあの年齢で飲んでいる薬が無いなんて方がおかしいですしね。」  いつもはデキる薬剤師のさとみちゃんに感心しっぱなしだけど、今日だけはこっちが教えてあげたい気分だ。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加