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「そういえば、今回の放送から、急に方針転換されてましたね」
「うん?」
「個人情報の扱いですよ。今までの垂れ流しっぷりが嘘みたいに、みんなが一斉に個人情報保護な方針で喋り始めるからびっくりでした」
だって中華料理屋のご主人まで、あぁ聞いちゃダメな奴ね、っていう物わかりの良さを示したのだ。あのリアクション、テレビ局へクレームがあったのだとしか思えない。
「もしかしたら、俺たちのここでの会話がドラマの制作サイドへ届いたのかもしれないなぁ」
ありえないけど、あるかもしれない。
そうなると起こしてみて初めて価値の出る奇跡って奴を、信じてみたくなる。
「じゃあ、せっかくだからもう一つ、ずっと気になってるところもここで指摘しておくかな。俺さ、さとみちゃんの演技はなんとかならないかと常々思っててさ」
「おお?! そこをズバっと言っちゃいます?!」
「いや、さとみちゃんのことは大好きだからあんまり言いたくないんだけど、彼女を見るたびになんか胸にもやもやが残るんだ。それって俺だけか?」
「気持ちは分かりますよ。あれはお辞儀が深くて長すぎるせいじゃないですかね?」
俺の相方は理由を探り出すように首を大きくひねった。
「あまりに丁寧過ぎると心を込めているという誠意より、嫌味な感じの方が伝わってきちゃうんですよね」
「ああ。あれはお詫びの時のお辞儀だからな。俺がいつもやってる奴だ」
「う……そこ、あんまり胸を張って言う話じゃないですってば」
呆れていた彼女に、ところで直近のお詫びの理由ってどんなのですか?、と聞かれた。
「それがちょうど二日前にあったんだ。抜いてくれって指示の出ていた降圧剤を抜き忘れて、患者さんの手元にまで行っちゃってさ。本人が気づいてくれて、服用せずに済んだけど」
その時の患者さんへのお詫びが、まさにさとみちゃん流90度のお辞儀。ガチで謝り倒さなきゃいけなかった奴だからだ。
「それはよーく反省しないとですね」
「はっはっは、でもな、人は思い出を忘れることで生きていけるものなんだぞ」
「うわぁ、エヴァだ! ゲンドウさんだ!」
どうしても今日はエヴァンゲリオンが頭から抜けない。
こうして俺たちはこの後、無駄にエヴァンゲリオンで盛り上がり、ついには仕事帰りにニンニクラーメン、チャーシュー抜きでも食べに行くか、という話にまでなってしまった。
「それって奢りですか?! わーい。ゴチになります♡ でもそこはチャーシュー大盛りでお願いします!」
「それだと綾波レイな雰囲気が出ないぞ」
「構いません。雰囲気より美味しさ重視です!」
彼女はアスカ並みの自信満々なVサインを俺に向けてきたのだった。
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