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明るい未来
「さ。行ってらっしゃい」
マリアはそう言って大切な人を送り出した。
世界戦争後。死の灰が降ったこの世界は人口減少問題と男性による不妊に悩まされていた。これらを問題にしたこの国では女は必ず子供産まなければならない決まりであった。
男は戦争から戻ってきた健康男子の末裔。その中でも女性には優しい男がもてはやされ、結果、その種族が生き残り、どの男も同じ血が流れている状況だった。
女は必ず男と結ばれなくてはならないが、どの男も同じであるので諍いはなくマリアもA Iが選んだ一番血縁が遠く相性がいい男性と結婚していた。
そんなマリアは特殊な能力があった。
それはこれから起こる出来事が視える能力だった。親の育児放棄により施設で育った彼女は、過酷な状況で生き抜くために身の回りで起こる出来事を必死に想像して過ごした。
部屋に怖い先生が来る。意地悪をした子が怪我をするなどであるが、この力はいけないことのような気がして他言した事はなかった。
やがて物心が付くと彼女はこの力を伸ばして行った。それはその人に触れるとその人に起こるこれから凡そ五分後の出来事が視えると言うものだった。
マリアは恐怖心からか自分の事はわからない。しかし他者と一緒にいれば自分も関わることである。
彼女は過去に触れた人に車が突っ込んでくる不幸が視えたことがあった。この時マリアはこれを避け、自分だけ難を逃れた。
時計の針が五歩進んだ未来。これは彼女が何をしても絶対変化しない。そんなマリアには親も友人もいなかった。
彼女には自分以外、守りたいものがなかった。
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