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そんなマリアであったが、結婚し可愛い娘ができた。娘に触れながら世話をしている間は、常に娘の5分後を視ている世界だった。
「え」
「どうしたのママ?」
「こっちにおいで」
公園に行こうとしている娘。しかしマリアの目には、娘が車でやってきた男達に拐われる様子が視えていた。
「どうしよう」
「ママ?震えているの」
マリアはわかっている。娘を隠しても何をしても5分後の未来は変わらないのだ。そしてマリアも今まで未来を変えようと思った事がなかった。しかし今は愛する娘のために何かをしなければならなかった。
マリアの夫は研究者だった。おそらくそれに関する犯罪者であろうと思った。
「ママ?」
「そうだわ」
マリアはまた娘に触れた。犯罪を知ってから1分後の今、6分経っていた。
「……パトカーが視える。そうだわ」
マリアは急いで警察に連絡を入れた。家の周りに不審な車がいると連絡した。そして娘の手を握った。犯人がやって来るまで後二分だった。
「あのね。家から出たら車に乗るけど。ママもいるから大丈夫よ」
「うん。お人形を持って行っていい?」
「いいわよ。ああ。神様」
マリアは娘に触れた。視えたのは今から五分後の出来事。マリアは娘とともに囚われ車に乗っていた。
「……白いワンボックスカー。運転席は外国風の男」
「ママ!行こうよ」
「そ、そうね」
マリアは携帯電話と財布。そして護身用の電気ナイフを持って玄関に出た。
そこには視えたような男達がおり、マリアと娘を車に連れ込んだ。
「静かにしろ」
「……ママ。どこに行くの?」
「静かに」
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