君待ちアステリズム

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『こんばんは、時刻は21時55分──』 ラジオからDJヨルノの落ち着いた低音が流れ、身体を起こす。テーブルに置いてあったグラスに手を伸ばし麦茶を一口飲む。 毎夜放送されるこのマニアックな星好きのためだけのチャンネル。内容は見ごろの星情報から始まり、NASAやJAXAの最新研究、週ごとのテーマとなる天体の掘り下げ、リスナーからの星に関する思い出話や相談まで、日替わりでコーナーが組まれている。 『それでは先週お伝えしましたテーマですが、〝明日の流星群に託したい願い〟というわけですが。いやぁ、このコーナー始まって以来じゃないでしょうか、非常に沢山のお便りやメールが届いています』 少し興奮気味にリスナーの手紙を読み上げていくDJヨルノの声は、蒸し暑い夏の夜には心地よい涼しげな声音だった。 沙織は熱狂的なヨルノのファンで、毎週このコーナーには手紙とメールを送っている。 ヨルノに読まれるとオリジナルの星空ステッカーが貰えるらしく、星空マニアの間ではそのステッカーを天体望遠鏡に貼ると、どんな観測し辛い星も捕らえることが出来るという。 もしかしたら沙織のメッセージが読まれるかもしれない。 そんな呑気なことを考えていたものだから、俺はヨルノの声と同時に、持っていたグラスを床に落とした。 『それでは次のお便り。 ラジオネーム、水槽の中のカムパネルラさん』
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