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「は……? え、わっ」
足元に転がったグラスを拾いあげ、慌ててスマホを掴む。沙織に電話をかけながら、必死にヨルノの声に耳を澄ませた。
『DJヨルノさん、いつも楽しみに聴いています。流星群に託したい願いということで、実は僕には中学の頃からの天体観測仲間が二人いました』
その内容は、間違い無く翔のものだった。
スマホのコール音が消え、沙織の声が受話口から聞こえる。
『聖! このメッセージって!』
「翔だ! 間違いない!」
『本当は今年も一緒に流星群を観測しようと、二人と随分前から約束をしていたのに、僕は家庭の事情で連絡先も告げられないまま遠い地に引っ越してきてしまいました』
沙織は静かにヨルノが読み上げる翔のメッセージを聴いている。
俺は机に移動して、翔の手がかりは無いか銀河ステーションのサイトにアクセスしていた。
『もしこの流星群に願いが託せるのだとしたら。もう一度三人で、流星群を見たいです。もう一度三人で、一緒に夢を語り合いたいです』
メッセージはほんの1分足らず。
その後ヨルノのコメントが入ったが、俺はもう耳に入れる余裕は無かった。
「沙織!」
再びスマホを耳にあてると、受話口からはすすり泣く沙織の声。
『か、翔だ……聖……っ……翔だよぉ』
「分かってる。泣くな! このメッセージどっから送られたとか分かんねーのかよ!!」
俺は銀河ステーションのサイト内をくまなく調べたものの、投稿者に関する情報は何一つ無かった。
そして、ふと──
思い出す。
『水槽の中のカムパネルラ、聴いてみ』
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