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「鍵本だ!」
知ってるとしたら。
あの詐欺師ヤローしかいない。
「悪い。沙織一回電話切るぞ。鍵本に電話する」
『うん。聖、あのね……』
沙織が珍しく不安そうな声を出した。
「どうしたんだよ?」
『翔が、鍵本先生に何か伝えたってことは。鍵本先生を信じてるってことなんじゃないかな……だから、』
沙織が言いたいことは分かってる。
俺が、鍵本に言わなきゃならないことも、分かってる。
あいつは嫌いだけど。
いつも嘘っぽくて、適当で、信用ならねーけど。
だけど俺に教えてくれたことは、嘘じゃ無かった。
「大丈夫。任せろ」
沙織を宥めつつ、通話を切る。高校の連絡網を机の引き出しから引っ張り出す。鍵本の電話番号は携帯ではなく自宅の番号だった。
番号をタップし、コール音を聴きながら思案する。
もし外出してたらどうやって────
『はい、鍵本です』
その声に、息を飲む。
「へ……? あれ? もし、かして……」
今夜は。本当に変なことばかりが起きる日だった。
まるで、翔が願った想いを叶えるために、何か目に見えない力が動いているかのような。
遠い何億光年離れた星たちが、俺たちを突き動かしているような。
そんな不思議な夜が、俺たちを待っていた。
「DJ、ヨルノ!?」
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