君待ちアステリズム

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** 昼休み、言われた通り俺と沙織はコンピュータールームを訪れた。意外にも鍵本の方が先に到着していて、俺たちがパソコン前の椅子に腰をかけると、早速一枚の紙を手渡してきた。翔の手紙だ。 「有馬んとこの父親は個人経営の商店してたんやけど、資金繰りが上手くいかんくなってなぁ、夜逃げ同然でこの街から出たんや。せやから引越し先も知らんし、残念やけど届いた手紙にも連絡先は書かれてへん」 「じゃあ、どこにいるかは」 「申し訳ないけど、ほんまにわからんのや」 渡された手紙は、確かに翔の字で書かれていた。突然退学したことのお詫びと、もっとこの学校で過ごしたかったこと、そして俺と沙織への謝罪が書かれていた。 「ヨルノは僕の弟なんや。銀河ステーションも友達に誘われて始めたAMチャンネルでなぁ、あそこまで人気出るとは思わんかったけど。そしてな、ヨルノが大学生の時に家庭教師しとったんが、有馬や」 「家庭、教師……」 沙織が零した声に、鍵本がゆっくり頷く。 「そや。だから銀河ステーション聴いて、有馬はすぐヨルノの正体に気付いた。今回、有馬のメッセージを読むことにしたのも、ヨルノが手紙の字を見て気付いたからや。これは間違いなく有馬の字やってな」 言われて、もう一度手元の便箋に目を落とす。 水色の綺麗な便箋に、現国の先生が書くような綺麗な字が書かれていて、一瞬で翔の字だと俺でも分かるほど美しい字。 その便箋を指でなぞる。 せめてもっと手がかりがあれば…… 「ね、先生、封筒は?」 沙織が急に、思案顔で腕を組んだ。 そう、まるでかの有名な高校生探偵のように。 「あぁ。あるけど、ほら」 鍵本が沙織に封筒を渡し、沙織は封筒の宛名を確認して笑った。 「ビンゴ。消印……遠野郵便局だって」 「岩手か!」 「遠っ!」
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