第四話

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「妙子は狐の(あやかし)の生まれ変わりだよ。妖の中でも仲が良かった方だと俺は思ってる。それにしても、昔と全く変わらないな。これだけオーラが同じなら、間違えようがないよ」  野上君は嬉しそうに、こちらを見ながら話している。こっちはこっちで、そんな親しげに見つめられても、いたたまれないんだけど──前世が狐? しかも(あやかし)? 全く記憶にございません。 「ああ、でも取り憑かれた後から、なんとなく仲が良くなって、前世では親友? みたいな存在だったんだ。なんせ俺、人間嫌いだし」 (いや、嫌いって言っても、あなたも人間だからね!!) 「野上君、うれし懐かしの再会に水を差すようで、申し訳ないのだけれど・・・・・・。私は覚えてないの。全く心当たりもなくて、本当に私なのかな」 「そうだよな・・・・・・。普通は、覚えてないよな。でも、妙子は否定したりとか、しないんだな」 「信じられないことだけど、この間の研究室のことを見てるからね。信じざるをえないっていうか。私は、野上君のことを信じてみたいと思ってる」  そこからは、平安時代の話になった。晴明が、どんな生活をしていたのか・・・・・・。前世での仲間の話や、陰陽師の仕事について、とりとめのない話を聞いていた。  直系の安倍晴明の子孫は、東京の何処かで暮らしているらしく、全く関係のない家に『野上大介』として転生してしまったことや、前世の記憶が幼少の頃からあって、(あやかし)が小さい頃から見えて、困る事も多かったため、独自で陰陽術を改良し、さらに使いやすくしたという話も聞いていた。  初めは他人事の様に聞いていたけど、前世での自分のことなのかもしれないと思い直し、途中からは真剣に話を聞いていた。 「妙子!」  しばらく話し込んでいた私達だったが、お昼すぎ、カフェテリアが混んでくると私を呼ぶ声が何処からか聞こえてきた。  講義が終わったのか、ミキがこちらへ駆けてくるのが見えた。私たちのテーブルに辿り着いたミキは、息を切らしながら、こう言った。 「あの、さっき聞いて驚いたんだけど、行方不明だった関根さん、遺体で見つかったって・・・・・・。生徒の間では、今、その話でもちきりよ」  私と野上君は席から立ち上がり、顔を見合わせたのだった。
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