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第五話
野上君とカフェテリアで別れると、私とミキは研究室へ向かった。
「妙子、講義は?」
「受けても、たぶん内容が入ってこないと思う」
「そっか」
「この間、赤川さんは『捜索しなくていい』って言ってなかった? 『警察が家宅捜索するから、罪から逃げられない』とも言ってたわよね?」
私は研究室へ向かう長い廊下を歩きながら、赤川さんとの会話を思い出していた。
「関根さんに会ったことがないから、どういう人物か分からないんだけど、やっぱり麻薬と気づかずに運び屋をやっていた。っていう話には無理があると思うの。周りの人の人物像を聞く限り『いい儲け話がある』って言われて話に乗る──そんな間抜けな事をするような人には思えないわ。だから私は何かから逃れる為に、嘘をついたと思ってたの」
「何の為に?」
「さあ? 例えば、密会の現場を見てしまって、口封じの為に殺されそうになって、逃げ回っていたとか。家族や、彼女を巻き込まない為にも、手紙まで書いたとか」
「うーん・・・・・・。なぜ手紙で書いたのかしら? メールだと証拠が残ってしまうから? でも、それは手紙も同じよね。見せてもらったけど、パソコンで打ったものっぽかったし」
「パソコンで打った手紙? ますます訳が分からないわ。まるで、捜査を撹乱する為にやったとしか思えないわ」
「撹乱?」
「関根さんが殺されて、遺体が見つからないのをいいことに、真犯人が捜査を撹乱したって理由の方が、しっくり来るかも」
私がそう言うと、ミキが目を丸くして私に聞いてきた。
「妙子、もしかして犯人が分かったの?」
「まさか。情報量が少なすぎて──どうにもならないわ。もし、関根さんが自殺でなかった場合、いつ殺されたかにもよるけど、赤川さんの鞄に手紙を入れられる人物には限りが出てくる・・・・・・」
そうなれば、大学のごく近しい人が殺人にかかわったことになる。
「??」
「殺人と決まった訳でもないしね」
「妙子、遺体が見つかったのは関根さんの実家の近くみたいなんだけど、行ってみる?」
「そうね。警察もいるでしょうし、今すぐって訳にはいかないけど・・・・・・。今度の土曜日に行ってみる?」
なんとなく、あの場所へ出掛けるのは気が重たかったが、一度行ってみる必要があると思っていた。
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