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第二話
次の日の朝。大学へ出掛ける準備をしていると、赤川さんからメールが入った。
──見つからなくても大丈夫なので、とにかく捜索は打ちきりにしてほしい。
そんな内容のメールだったが、急に取りやめになった理由は書かれていなかった。その日の午後は講義を受ける予定だったが、その前に私はミステリー研究会の研究室へ向かった。
ミキを呼び出して、どうするべきか話し合おうと思った。昨日、おばあさんと話したばかりで、こんなに中途半端な状態で捜索を打ち切りにするなんて、納得がいかない。
そんな風に、考え事をしながら部屋の中へ入ったら、入り口に人が立っていたことに気がつかなかった。
「いってぇ・・・・・・」
「ごめん・・・・・・。って、誰?!」
私は知らない人の足を踏んでしまったことに驚いて、思わず叫んでしまった。背の高い茶髪の彼は振り返ると、顔を顰めていた。
「もしかして、あなたミステリー研究会の入部希望者? 先輩達なら屋上にいるわよ。今日は、地球外生命体が現れる可能性の高い日らしいから」
「はあ」
彼は納得したような、していないような曖昧な返事をすると、こちらを見つめていた。
「何よ」
「俺は、UFOに興味はない」
「じゃあ、何?」
「君はUFOに興味があって、このサークルに入ったの?」
無表情だったが、真っ直ぐに見つめてくる彼の視線には嘘は通用しない気がして、私は正直に答えていた。
「私は、もともと妖怪に興味があったのよ。座敷わらしとか、天狗とか、そういうの」
「ふーん」
すると、何故か興味深そうに再びこちらを見つめていた。
「もしかして、覚えているのか?」
「はぁ?!」
「そんな訳ないか」
そう言うと、彼は溜め息をついて部屋を出ていった。
「初対面なのに失礼な奴」
彼が部屋を出て行ってから、サークル入部希望者だったかもしれないのに、先輩達に悪いことをしたな。と思った。
そうこうしている内に、ミキがやって来て、昨日の話になった。話し合った結果、赤川さんから、もう一度話を聞いてみようということになった。
部屋を出る頃には、研究室へ来た彼の事は、すっかり忘れてしまっていたのだった。
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