第四話

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第四話

 次の日の午前中。講義が無いと言っていた野上君を大学のカフェテリアに呼び出した。  カフェテリアに到着すると、野上君はまだ来ていなかった。今のうちにレポートをやろうと思い、ノートパソコンを広げたが、昨日の事が気になって手を動かすことが出来なかった。  持ってきていたA4サイズのノートに走り書きをして頭の中を整理する。こういうときは、考えていることを紙に書くと、頭の中が整理されてスッキリするのだ。  依頼してきた赤川さんの彼氏の関根さんが行方不明→赤川さんによって、捜索が打ちきり→そして二週間後、所在不明だった赤川さんに、やっと話を聞けると思ったら、関根さんはバイト先の先輩の彼氏にバイトを勧められ、麻薬とは知らずに運び屋をやっていた。  内緒にして欲しいと赤川さんに言われるが、何故か警察にはバレていて、関根さんの家に警察が来て家宅捜索になる→野上君という編入生が、キツネの──  そこまでノートに書いて、自分が書いたキツネの文字を見ると、急に馬鹿馬鹿しくなって、ペンをテーブルの上に置いた。すると、後ろから声が聞こえてきた。 「ふーん。そういうことだったのか」  音もなく現れた野上君は、私の後ろからノートを覗きこんでいた。慌てて隠しながら、野上君に文句を言う。 「ちょっと、声くらい掛けなさいよ。あなたのこと、まだちゃんと認めた訳ではないのよ」  そう言って、左後ろにある彼の顔を睨みつけた。 「えっ、何で?」  そう言うと野上君は、少し不服そうに向かいの席へ座った。長い足をもて余すように、足を組んでこちらを見ている彼の目は、一重なのに、形がくっきりしていて、威圧的だった。 「そんなに人の顔を、ジロジロ見るなよ。俺は口下手だから!!」 「え?」  慌てている野上君をみて、見た目は大人っぽいけど、中身は意外と子供なのかもしれないな、と思った。 「今回の事件解決に、真面目に協力してくれるって信じてもいい?」 「その為に、ここへ来た訳だし。今回だけじゃなくて、ずっとあんたを助けたいと思っている」  真剣な視線に、不覚にも一瞬ドキリとしてしまった。視線をそらし、気を取り直すと野上君に向き合った。 「あんたじゃなくて、桜川よ。桜川妙子。あなたと同じ二年生。よろしくね」 「桜川妙子? 桜川って言いづらいな。俺も妙子って呼んでいい?」 「えっ、何で? いいわけないでしょ」 「え? じゃあ、タエ? おタエ?」  私は彼の顔を見て、ため息をつくと投げやりに言った。 「もう、妙子でいいわよ!!」  野上君を軽く睨むと、彼は嬉しそうに笑ったのだった。 「ありがとう、妙子」
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