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「……ねえ、どうして学校来ないの? 高校どうするの?」
ずり、と一歩お尻で距離を詰めて私は訊いた。
「行かねえ」
目を閉じたまま、彼は答える。
「中卒で、働くってこと?」
「知らん」
苦悶の内から突き放される。
無性にイラッときて、私は身を乗り出した。
「知らんって、自分の人生でしょ? 今ちゃんとしないと将来大変なことになるよ」
「将来?」
ぎろりと彼の目が向いた。白目が、見たことないほど血走っていた。
「誰の将来だよ。バカみてえ」
吐き捨てられた言葉に、心臓を貫かれた。
私の将来。
100点に手が届かない。失望され、罵倒され、殴り蹴られる。
私のせいで母は狂った。父はそう信じている。私さえいなければ。
でも私は私を消せないから、引き続き100点に縋り付く。
だって愛されたい。平穏へのパスポートはこれだけだ。
もう間違えない。今度こそ。
そういう名前のカミソリの、刃の上を歩いていく。
いつまで?
……バカみたいだ。本当に。
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